The Kaiju Preservation Society
“The Kaiju Preservation Society” by John Scalzi, 2022
腹に天然の原子炉を持つ怪獣たちが大暴れ。ヒューゴー賞作家による日本の怪獣映画へのオマージュたっぷりのSF小説。換骨奪胎された異次元のゴジラ・モスラが楽しい。ITベンチャー要素もあり。間違いなくドラマ化されそう。
2020年、パンデミックがニューヨークを襲った。フードデリバリーベンチャーのエグゼクティブ、ジェイミー・グレイはCEOから突然解雇を言い渡され、末端の配達員として生計を立てている。配達先で古い知り合いのトムと出会う。トムは勤務先のKPSというNPOでポストに空きがあるとジェイミーを誘う。
ジェイミーが入社したKPSはKaiju Preservation Society(怪獣保護協会)の略だった。ジェイミーたちはグリーンランドに隠された秘密ゲートウェイから、異次元にあるもうひとつの地球に入る。そこには巨大な怪獣が歩き回っている。怪獣は天然の原子炉を腹の中に持っており、稀に大爆発を起こす。核爆発が起きると、我々の世界と並行世界を隔てるバリアが弱くなる。怪獣を保護しないと地球が危ないのだ。
シン・ゴジラがゴジラの姿を革新したように、本作も日本で生まれた怪獣を大胆にアメリカSFっぽくアレンジしている。怪獣は単体の生物ではなく、寄生生物と一体化した生態系という設定になっているのが斬新。環境問題を強く意識させる。
異次元世界での移動にKPSが使う飛行船の名前が”Shobijin”=小美人。モスラに出てくる妖精の名前だ。日本の怪獣映画の影響がいたるところにある。ジョンスコルジーはユーモアたっぷりで、緊迫したシーンでさえ可笑しい。スターシップトゥルーパーズのノリだ。
これシリーズとして続くんじゃないかな。