Grey Bees
ウクライナを代表する作家アンドレイ・クルコフが、ロシア侵攻前の2018年にロシア語で発表した小説。ロシアとウクライナの紛争地帯が舞台で緊張感はあるが、暗い戦争小説ではなく、ウィット、ユーモアに富む人間ドラマで、読むのが楽しかった。
主人公のセルゲイ・セルゲイッチは鉱山の安全検査員を辞めて養蜂家になった49歳で、離婚しており妻と娘は別の場所で暮らしている。彼が住んでいるドンパスは、ウクライナ軍の支配地域とロシアが支援する分離主義者が対立する境界「グレーゾーン」にある。爆撃やスナイパーの狙撃が激しくなって住民は逃げ出し、この街に住むのはセルゲイと隣人のパシュカの二人だけになってしまった。セルゲイにとってパシュカは長年の宿敵だったが、電気が止まり、危険と隣り合わせの環境になった今、二人は協力せざるを得なくなる。
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